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マイナンバー制度というと、2003年から施行された住民基本台帳ネットワーク、通称「住基ネット」と似たような制度なのではと考える人が少なくありません。
どちらも国民1人1人に番号を与える「国民総背番号制」の発想に基づいたシステムですので、マイナンバー制度と住基ネットには確かに似ている点が多く存在します。

住基ネットとは何であるのか、マイナンバー制度とはどのような関係なのか、そしてマイナンバー制度と住基ネットにはどのような違いがあるのかについて説明いたします。

 

住基ネットとは?


2003年に始まった住基ネットは、氏名・性別・生年月日・住所が記された住民票を編成したもので、居住関係を公証し、全国共通で本人確認ができるネットワークを意味します。

総務省が公表しているところによりますと、

  • 国民健康保険や後期高齢者保険、介護保険、国民年金の資格の確認
  • 児童手当の資格の確認
  • 選挙人名簿への登録
  • 義務教育のための学齢簿の作成
  • 生活保護にかかわる事務
  • 予防接種にかかわる事務
  • 印鑑登録にかかわる事務
に、住民基本台帳は使用されています。
この住民基本台帳を、オンラインで便利に利用するシステムが「住基ネット」なのです。

住基ネットが導入されることで、パスポート申請や更新の際にも住民票が不要となり、パスポート以外にも公的機関で住民票を提出する機会が徐々に減少していき、国民にとっては公的書類発行の手間や手続きの簡略化が実現することになりました。

手続きが簡略すること自体は非常に好ましいことですが、当然のこととして新規にシステムを導入することや、システムを維持していくためには莫大な費用がかかっています。

住基ネットの導入母体となっている総務省の発表によりますと、システム導入に400億円、維持に年間130億円の費用がかかっています。

 

有効期限は?個人番号カードとの併用は?


市区町村の役所の窓口で所定の用紙に必要事項を記入して本人確認書類を提示すると、住基ネットを利用する「住民基本台帳カード」を発行することができます。

住民基本台帳カードには顔写真ありと顔写真なしの2つのタイプがあり、発行する各自が選ぶことができます。
身分証明書としても利用することができ、有効期限は10年となります。

また、発行手数料は自治体によって様々で、無料の場合や500円、1000円必要な自治体もあります。

マイナンバー制度が2016年1月に施行されるのを受け、住民基本台帳カードの新規発行は2015年12月22日までとなっております。
すでに住民基本台帳カードを保有している場合は有効期限内は使用できますが、期限か切れる前に、マイナンバーが記された「個人番号カード」を取得すると、住民基本台帳カードは有効期限内であっても返納しなくてはなりません。

つまり、住民基本台帳カードと個人番号カードの両方を同時に保持することはできないのです。

個人番号カードの有効期限は20歳未満は5年、20歳以上は10年となっています。
個人番号カードに顔写真の掲載は必須となっており、発行手数料は全国一律無料です。

マイナンバーが記された「通知カード」を受け取った方から順に、個人番号カードの交付を申請することが可能ですが、個人番号カードを発行するかどうかは、個人の意思に任されています。
住民基本台帳カードも個人番号カードと同様、発行は任意となっています。

また、2014年3月31日時点での累計発行枚数は約833万枚と公表されています。
住民基本台帳の制度が始まってから10年以上が過ぎましたが、発行枚数は1割に満たず、住民基本台帳カードはあまり普及しなかったと言えるでしょう。

 

マイナンバー制度と住基ネットの違い

 

マイナンバー制度と住基ネットの違いを、いくつかの視点から探っていきましょう。
 

使用範囲が非常に狭い住基ネット


住基ネットを制度化する際に、国民のプライバシーを著しく侵害してしまうのではと、日本弁護士会などの人権問題にかかわる有名無名の団体が激しく抗議を行いました。
そのため、住基ネットは、税金のネット申告やパスポート発行、年金関係の諸手続きなど、利用が著しく制限されています。

カード発行が任意であることは、住民基本台帳も個人番号も同じですが、マイナンバー制度は、全ての行政手続きや税関係の手続きに導入され、今後も、金融関係やその他の分野にも適用範囲が拡大することが決定しています。

マイナンバー制度は住基ネットと比較すると、非常に広範囲に利用される制度だと言えるでしょう。

 

自治体が導入を決める住基ネット


住基ネットは国家システムですが、導入するかどうかは地方自治体に一任されていましたので、住民基本台帳に接続するかどうかを自治体が決定することも可能でした。
実際に、プライバシー保護法や住民の意見などと照らし合わせて、選択的に導入している自治体も少なくありません。

また、住基ネットの違法性については、何度も訴訟の対象となってきました。
2005年、金沢地方裁判所では「住基ネットはプライバシーの保護を保証した日本国憲法13条に違反する」と判断されましたが、同年、名古屋地方裁判所では「住基ネットはプライバシーの保護を損なわない」という判決が下り、住基ネットが違法であるかどうかは専門家でも判断が難しいことが浮き彫りになりました。

一方、マイナンバー制度の施行は「国が行う事務を地方自治体に委託する」という形になります。
地方自治体の思惑や違法性の議論とは関係なく、強制的に全国一律に導入される制度とも言えるのです。

 

表示される番号は別!


どちらも行政手続きの簡便化のために導入されることは同じですが、住民基本台帳カードの番号は11桁、個人番号カードは12桁と、表示される数字の数が異なります。
もちろん、住民基本台帳カードと個人番号カードの数字には関連性は一切ありません。

発行体も、住民基本台帳カードは総務省、個人番号カードは内閣官房ですので、まったく別の番号、別の数字ということができるのです。

ですが、住民基本台帳カードの番号も、個人番号カードの番号も、無作為に選ばれた数字と検査数字(チェックディジット)から成っているのは同じです。
本籍がある場所や性別・生年月日などの個人情報は、カードに記された番号から読み取ることは不可能ですので、安全性の高い番号と言えます。

どちらも、引っ越しして住所が変わっても、結婚して名字が変わっても、番号は変わらないことも同じです。
悪用されたもしくは悪用の恐れがある以外の理由で番号を変更することができないのも、両カードに共通しています。

 

導入時期による国民の意識の違い


住基ネットの導入が決定したころは、現在と比較するとフェイスブックやツイッターなどのSNSは普及していませんでした。
そのため、個人情報をネットに連結させることに抵抗を感じる人は多くいました。

ですが、漠然と個人情報が流出することが怖いと感じていた2003年当時と比較すると、マイナンバー制度が導入される2016年は、各個人がネットの怖さや個人情報流出対策について理解を深めており、インターネットに対する抵抗感も非常に低くなってきています。

また、銀行で行う振込や送金などを個人のスマートフォンやパソコンで行う「インターネットバンキング」も2003年当時と比較すると非常に普及していますので、インターネットで情報を扱うことや金銭の授受を行うことに対して、「怖い」と感じる人よりも、「便利」とポジティブに感じる人が増えてきているのです。

住基ネットは、上手に活用すれば非常に便利なシステムと言えるのですが、時期尚早であったのではという感も否めません。

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